年金受給者でも確定申告が必要な人がいると聞きました。年額いくらの受給から確定申告が必要ですか?
年金受給者でも確定申告が必要な人がいると聞きました。年額いくらの受給から確定申告が必要ですか?
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2025/12/01 17:02
男性
60代
年金だけで生活している場合でも、一定額を超えると確定申告が必要になると聞きました。どのくらいの年金額から申告が必要になるのか、また税金が発生する基準や計算方法についても知りたいです。
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
年金受給者でも、条件によっては確定申告が必要になります。判断の中心となるのは「確定申告が必要かどうか」を決める基準であり、税金が発生するかどうかとは別の基準で整理する必要があります。
まず、確定申告の要否は「申告不要制度」によって決まります。公的年金の収入が400万円以下で、年金以外の所得が20万円以下であれば、原則として所得税の確定申告は不要です。遺族年金や障害年金は非課税のため、この判定には含めません。また、所得税の申告が不要でも、住民税の申告が必要となるケースがある点には注意が必要です。
さらに、申告不要制度の基準を満たしていても、給与と年金を併せて受給している場合や複数の年金を受け取っている場合など、源泉徴収だけでは正しい税額にならないと判断されるケースでは申告が必要です。医療費控除、ふるさと納税、住宅ローン控除の初年度など、還付を受けたい場合も確定申告を行うことで有利になります。
一方、税金が発生するかどうかは別の仕組みで決まります。2025年から基礎控除が拡大したことで、年金のみの受給者の場合は税金がかかりにくく、65歳未満で年金収入155万円未満、65歳以上で205万円未満であれば所得税が発生しにくい状況です。ただし、税金がかからない場合でも、申告不要制度の条件を満たさなければ確定申告が必要となる場合があるため、「税金がゼロ=申告不要」とは限りません。
このように、確定申告が必要かどうかは年金額だけでは判断できず、年金以外の所得や控除の状況と合わせて総合的に確認する必要があります。迷った場合は、一度申告しておくことで還付につながるケースも多いため、早めに検討することをおすすめします。
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確定申告
確定申告とは、1月1日から12月31日までの所得を計算して翌年の2月16日から3月15日に申告し、納税する手続き。多くの会社では年末調整を経理部がしてくれるが、確定申告をすると年末調整では受けられない控除を受けることができる場合もある。確定申告をする必要がある人が確定申告をしないと加算税や延滞税が発生する。
公的年金等控除
公的年金等控除とは、年金を受け取っている人の所得税や住民税を計算する際に、年金収入から一定額を差し引ける控除制度です。これにより課税対象となる金額が減り、税負担を軽減できます。 対象となるのは、国民年金・厚生年金・共済年金などの「公的年金」に限られます。これらは所得税法上の「公的年金等」に分類され、控除の対象となります。 一方で、iDeCo(個人型確定拠出年金)や企業型DC、個人年金保険などは、たとえ年金形式で受け取ったとしても税法上は「公的年金等」に該当せず、公的年金等控除の対象外です。これらは「雑所得(その他)」として課税されます。 控除額は受給者の年齢と年金収入の額に応じて異なり、特に65歳以上の高齢者には手厚い控除が設けられています。 | 年齢 | 公的年金等の収入額 | 控除額 | | --- | --- | --- | | 65歳未満 | 130万円以下 | 60万円 | | | 130万円超〜410万円以下 | 収入額 × 25% + 37.5万円 | | | 410万円超〜770万円以下 | 収入額 × 15% + 78.5万円 | | | 770万円超 | 一律195.5万円 | | 65歳以上 | 330万円以下 | 110万円 | | | 330万円超〜410万円以下 | 収入額 × 25% + 27.5万円 | | | 410万円超〜770万円以下 | 収入額 × 15% + 68.5万円 | | | 770万円超 | 一律195.5万円 | たとえば、65歳以上で年金収入が250万円であれば、110万円の控除が適用され、課税対象となる所得は140万円に圧縮されます。
基礎控除
基礎控除とは、所得税の計算において、すべての納税者に一律で適用される控除のことを指す。一定額の所得については課税対象から除外されるため、納税者の負担を軽減する役割を持つ。所得に応じて控除額が変動する場合もあり、申告不要で自動適用される。
遺族年金
遺族年金とは、家計の支え手である人が亡くなった際に、残された家族の生活を保障するために支給される年金のことです。公的年金制度の中に組み込まれており、国民年金から支給される「遺族基礎年金」と、厚生年金から支給される「遺族厚生年金」があります。対象となるのは、主に配偶者や子どもで、支給額や期間は家族構成や被保険者の加入状況などによって異なります。遺族年金は、残された家族が安定した生活を続けるための公的な支援制度として、生活設計においてとても重要な役割を果たします。
障害年金
障害年金とは、病気やケガによって日常生活や就労に支障がある状態となった場合に、一定の条件を満たすと受け取ることができる公的年金の一種です。これは、老後に受け取る老齢年金とは異なり、まだ働き盛りの年齢であっても、障害の状態に応じて生活を支えるために支給されるものです。 受け取るためには、初診日の時点で年金制度に加入していたことや、一定の保険料納付要件を満たしていること、そして障害の程度が法律で定められた等級に該当することが必要です。障害年金には「障害基礎年金」と「障害厚生年金」の2種類があり、どの年金制度に加入していたかによって対象や支給額が異なります。これは障害を抱えながらも暮らしていく人の経済的な支えとなる大切な制度です。


