事実婚はずるいと批判される理由はなんですか?
事実婚はずるいと批判される理由はなんですか?
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2025/09/22 09:25
男性
30代
結婚の形には法律婚と事実婚がありますが、近年は事実婚を選ぶ人も増えてきています。その一方で「事実婚はずるい」といった批判的な意見を耳にすることがあります。税制上の優遇や社会保障制度との関係、あるいは法律婚との差異による公平性の問題などが背景にあるのでしょうか?
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
「事実婚はずるい」という批判は、多くの場合、法律婚を前提にした制度設計との不整合や、運用上のばらつきが原因です。事実婚が一方的に得をしているわけではなく、むしろ保護が弱い部分も多くあります。
まず、税制や社会保障は法律婚を前提にしているため、事実婚では自動的に配偶者と同じ扱いにならない制度が多くあります。その一方で、会社の福利厚生や一部の社会保険では内縁関係を認める場合もあり、この不均一さが「都合のよい部分だけ恩恵を受けている」と見られやすくなります。
次に、法律婚であれば婚姻費用の分担や相続権などが保障されますが、事実婚では自動的に認められず、裁判や立証が必要です。この点が「義務や責任を回避している」との批判につながります。
さらに、住民票や会社の規程などでの取扱いが統一されておらず、窓口によって判断が異なるため、不公平感が生じやすい構造があります。また、子どもの姓や学校・医療の手続きで追加対応が必要になることも、誤解や反発を招きます。
一方で、事実婚には明確な不利もあります。特に相続ではパートナーは法定相続人とならず、遺言や保険などで備えなければ財産承継は難しいのが現実です。税制面でも控除が受けられない場面があり、決して「お得」ではありません。
したがって、事実婚を選ぶ場合は、契約書や遺言、公正証書、保険の受取人指定などを整備し、リスクを補うことが欠かせません。批判の背景には制度が多様な家族形態に追いついていないという問題があり、当事者が責任をもって制度の不足を補う姿勢が重要になります。
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法律婚
法律婚とは、婚姻届を役所に提出し、法律上正式に認められた婚姻関係のことを指します。日本の民法では、結婚は婚姻届の提出と受理によって効力が生じると定められており、これが成立した関係が「法律婚」です。 法律婚をすると、夫婦は互いに扶養義務を負い、財産の共有、相続、税制上の配偶者控除、社会保険の被扶養者認定など、さまざまな法的な権利と義務が与えられます。また、子どもが生まれた場合は、嫡出子として扱われ、戸籍にも夫婦の子として記載されます。 これに対し、婚姻届を出さずに共同生活を送る「内縁関係(事実婚)」とは、法的な保障や権利に大きな違いがあるため、資産運用や相続、生活設計を考えるうえで、法律婚かどうかは非常に重要な要素となります。
内縁関係(事実婚)
内縁関係(事実婚)とは、法律上の婚姻届を提出していないものの、社会的・実質的には夫婦として共同生活を営んでいる関係を指します。お互いに結婚の意思を持ち、継続的に同居し、家計や生活を共にしている場合、一定の法的効果が認められることがあります。裁判所は、その実態に基づいて、内縁関係の成立と効力を判断します。 たとえば、生活費の分担義務や内縁解消時の財産分与、慰謝料請求、さらには労災や生命保険における遺族補償の受給資格など、法律婚に準じた取り扱いを受ける場面もあります。また、健康保険の被扶養者や国民年金の第3号被保険者として認められる場合もあります。 しかし、内縁関係はあくまで法律上の「婚姻」ではないため、相続や税制上の扱いには明確な限界があります。内縁の配偶者には法定相続権がなく、遺産を受け取るには遺言や信託契約などによる明示的な指定が必要です。また、相続税における配偶者控除(最大1億6,000万円)や、所得税の配偶者控除・配偶者特別控除といった優遇措置も原則として適用されません。 このため、内縁関係にある当事者が安心して暮らし続けるには、生前からの明確な財産承継対策が不可欠です。公正証書遺言の作成、信託スキームの活用、生命保険金の指定などを通じて、遺産の受け渡しや税負担への備えを整えておくことが重要です。 なお、同居期間や関係の安定性、家計の一体性などが不十分な場合、内縁としての法的保護が否定されることもあり得るため、形式にとらわれない実質的な関係性の証明が重視されます。内縁関係の権利保全には、専門家の助言を受けながらの対応が望まれます。
婚姻費用
婚姻費用とは、夫婦が結婚している間に必要となる生活費や住居費、教育費など、家庭を維持するためにかかる費用全般を指します。法律上、夫婦は互いに協力し合って生活する義務があり、どちらか一方に収入がある場合でも、もう一方を経済的に支える必要があります。 たとえば、別居中であっても離婚が成立していない場合は、収入の多い側が相手に対して婚姻費用を支払う義務があります。これは、生活のレベルを極端に落とさずに、婚姻中の生活の継続を保障するための制度です。支払い金額は、夫婦それぞれの収入や生活状況、子どもの有無などをもとに裁判所の基準などを参考にして決められます。
相続権
相続権とは、亡くなった人(被相続人)の財産を、法律に定められた権利として受け継ぐことができる資格を指します。通常は配偶者や子ども、父母、兄弟姉妹などが相続人となり、その範囲や優先順位は民法で定められています。相続権を持つ人は「法定相続人」と呼ばれ、財産を法的に引き継ぐことができます。 また、遺言がある場合には、遺言によって指名された人(遺贈を受ける人)にも一定の財産を受け取る権利が生じることがあります。ただし、相続には権利だけでなく義務(借金などの負債の承継)も含まれるため、相続放棄や限定承認といった選択も可能です。資産運用や相続設計の場面では、誰に相続権があるかを明確にすることが、円滑な財産承継のために非常に重要です。
相続人(法定相続人)
相続人(法定相続人)とは、民法で定められた相続権を持つ人のことを指します。被相続人が亡くなった際に、配偶者や子ども、親、兄弟姉妹などが法律上の順位に従って財産を相続する権利を持ちます。配偶者は常に相続人となり、子がいない場合は直系尊属(親や祖父母)、それもいない場合は兄弟姉妹が相続人になります。相続税の基礎控除額の計算や遺産分割の際に重要な概念であり、相続対策を検討する上で欠かせない要素となります。




