金などの貴金属を売却した際、どのように税金がかかりますか?
金などの貴金属を売却した際、どのように税金がかかりますか?
回答受付中
0
2025/08/02 08:50
男性
30代
最近、金価格が上昇していると聞き、以前購入した金を売却しようかと考えています。金のような貴金属の売却によって利益が出た場合に、どのような税金がかかるのでしょうか?
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
金のような貴金属を売却して利益が出た場合、その利益は「譲渡所得」として課税対象になります。これは事業として行っているわけではない個人の金取引に適用されるもので、株式のような申告分離課税ではなく、他の所得と合算して課税される「総合課税」として扱われます。
ただし、すべての売却が課税対象となるわけではありません。まず、売却価格が1品あたり30万円以下の場合(たとえば小さな金貨や装飾品)は「生活用動産」として非課税になる特例があります。また、1年間の譲渡所得の合計が50万円以下であれば、「特別控除」が適用されて課税されません。この50万円の枠は金に限らず、他の「その他資産の譲渡益」と合算して適用される点に注意が必要です。
課税される場合、譲渡益は「売却価格から取得費と売却にかかった費用を引いた金額」で算出されます。取得費には購入時の価格、売却費用には鑑定料や輸送保険料などが含まれます。もし購入時の記録が残っていない場合は、取得費を「売却価格の5%」として見なす概算取得費を用いることができます。
さらに、保有期間が5年を超えていれば「長期譲渡所得」となり、課税対象額を1/2に圧縮できる特例があります。これにより、課税される所得が小さくなり、結果として税率が下がる可能性もあります。逆に5年以内であれば短期譲渡所得となり、この優遇措置は使えません。
譲渡所得は他の所得(給与や年金など)と合算されるため、所得税は累進課税が適用されます。税率は5%から45%まであり、住民税10%と復興特別所得税も加算されるため、実質的な税率は15%〜55%となる可能性があります。
給与所得者などの場合、年収が2,000万円以下であっても、譲渡益などの「その他の所得」が年間20万円を超えると確定申告が必要になります。それ以外の方も、譲渡所得が発生したら原則として確定申告が必要です。確定申告の時期は、通常翌年の2月中旬から3月中旬です。申告には、売却時の明細書、領収書、取得費の証明書類などを保管しておくことが重要です。
なお、金地金の売却時には、買取業者が消費税相当額を上乗せして買い取ってくれますが、個人であればこの消費税を申告・納税する義務はありません。また、住民税は所得税の確定申告に基づいて課され、市区町村から別途通知されます。
実務的には、取得費の証拠をしっかり保管することが非常に重要です。もし領収書や記録がない場合は、先述の5%ルールを使うしかなくなり、納税額が大きくなる可能性があります。また、売却を1回でまとめて行うのではなく、複数年に分けることで毎年50万円の特別控除を活用し、課税対象を抑える方法もあります。
注意点として、金ETF(上場投資信託)や純金積立などは扱いが異なり、譲渡益は申告分離課税(20.315%)で源泉徴収されます。現物金と混同しないようにしてください。また、金を売却せずに保有したまま亡くなった場合は、相続時の金価格で評価されて相続税の対象になるため、生前に売却や資産の組み替えを検討する価値があります。
このように、金などの貴金属の売却にはさまざまな税制上のルールや優遇措置があります。売却額が大きい場合や取得時の記録が曖昧な場合は、早めに税理士などの専門家に相談して、適切な時期や方法を検討することをおすすめします。
関連記事
関連する専門用語
特別控除
特別控除とは、一定の条件を満たした場合に特別に認められる所得控除のことを指す。例えば、不動産譲渡所得に対する3,000万円特別控除や、住宅ローン控除などが含まれる。通常の控除とは異なり、特定の政策目的のために設けられており、適用を受けるには条件を満たす必要がある。
長期譲渡
長期譲渡とは、不動産などの資産を取得してから長期間保有したうえで売却することによって生じた譲渡のことをいいます。具体的には、土地や建物を「譲渡した年の1月1日時点で5年を超えて所有している場合」に、その譲渡は長期譲渡と扱われます。長期譲渡による利益(譲渡所得)には、税率が短期譲渡よりも低く設定されており、税金面で有利になる仕組みです。 これは、投機的な短期売買よりも、安定した長期保有を促すことを目的とした税制上の優遇措置です。相続や贈与によって取得した資産については、被相続人や贈与者の所有期間を引き継ぐため、長期か短期かの判断には注意が必要です。資産を売却する際の税金負担に大きく関わるため、所有期間の確認が重要です。
総合課税
総合課税は、給与や年金、事業収入、不動産収入、利子、配当など、1年間に得たさまざまな所得を合算し、その合計額に累進税率を適用して所得税を計算する方式です。 所得が増えるほど税率が高くなるため、高所得者ほど税負担が大きくなる点が特徴です。一方、金融所得には総合課税以外の課税方法を選択できる場合があります。 たとえば、株式譲渡益や先物取引益などは「申告分離課税」を選ぶことで、ほかの所得と区分して一律20.315%(所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%)で申告できます。 また、預貯金利息や一部の公社債利子などは、支払元が税金を源泉徴収する「源泉分離課税」となり、原則として確定申告は不要です。配当や利子のように課税方式を選択できるケースでは、ご自身の所得水準や控除の有無、損益通算の可能性を踏まえ、総合課税・申告分離課税・源泉分離課税のどれを採用するかを検討することが、最終的な税負担を抑えるうえで重要になります。
確定申告
確定申告とは、1月1日から12月31日までの所得を計算して翌年の2月16日から3月15日に申告し、納税する手続き。多くの会社では年末調整を経理部がしてくれるが、確定申告をすると年末調整では受けられない控除を受けることができる場合もある。確定申告をする必要がある人が確定申告をしないと加算税や延滞税が発生する。




