リースバックとは?「やばい」「やめた方がいい」と言われる理由、実際のデメリット・メリットをわかりやすく解説

リースバックとは?「やばい」「やめた方がいい」と言われる理由、実際のデメリット・メリットをわかりやすく解説
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公開:
2025.12.02
更新:
2025.12.02
自宅を手放さずに資金を確保できるリースバックは、老後資金の確保や住宅ローン返済など多様な目的で利用が広がっています。しかし市場価格より低い売却額や相場を上回る家賃設定、契約期間の制約など見落としやすい点も多く、仕組みを理解せずに契約すると負担が長期化するリスクは見逃せません。この記事では、リースバックの流れや家賃算定の基準、メリットとデメリットなど、利用前に判断すべきポイントを解説します。
サクッとわかる!簡単要約
この記事を読むことで、リースバックの実態を正しく理解し、契約前に押さえておくべき判断材料を整理できます。売却価格が市場の約70%になる傾向や、家賃が利回り5〜8%で決まる仕組みなど、表面上では分かりにくいコスト構造やリスクを具体的に把握できます。また、メリットだけでなくデメリットやトラブル事例も理解し、自分の状況に最適な選択肢を見極められるようになります。
リースバックの仕組み
リースバックは、不動産の売却と賃貸借契約を同時におこなう取引です。具体的には、リースバック運営会社に自宅を売却し、売却代金を受け取ったあと、その会社と賃貸借契約を結んで家賃を支払いながら住み続けます。
通常の不動産売却では引っ越しが必要ですが、リースバックなら所有権が移転したあとも同じ家に居住できる点が大きな特徴です。売却により資金を得られるため、住宅ローンの完済や老後資金の確保など、さまざまな目的で活用されています。
リースバックが利用される4つの場面
リースバックは、まとまった資金が必要でありながら住環境を変えたくない方に適した資金調達方法です。それぞれの状況によって最適な契約条件は異なるため、自分の目的に合った活用方法を検討しましょう。
老後資金を確保したいとき
年金だけでは生活費が不足する場合や、医療費・介護費用の備えが必要な場合に、リースバックが活用されています。自宅を売却することでまとまった資金を得られるため、老後の生活に安心感をもたらします。
高齢になると新たな賃貸契約の審査が通りにくくなりますが、リースバックは基本的に年齢制限がありません。住み慣れた環境で生活を続けられるため、精神的・身体的な負担も軽減できます。
住宅ローンの返済負担を軽減したいとき
住宅ローンの返済が家計を圧迫している場合、リースバックで得た売却代金を使ってローンを完済できます。完済後は毎月の支払いが家賃のみになるため、返済額より家賃が低ければ月々の負担を減らせます。
返済が滞り、金融機関から残債の一括返済を求められているケースでも有効です。競売や任意売却を避けながら、同じ家に住み続けられるメリットがあります。
- なお、住宅ローンが残っている状態でリースバックを利用するには、売却時に抵当権を抹消する必要があります。売却代金でローンを完済できるかどうか、事前に確認しましょう。
相続対策と資産整理を進めたいとき
相続人が複数いる場合、不動産の分割をめぐってトラブルが発生することがあります。リースバックで生前に自宅を現金化しておけば、相続時に公平な遺産分割がしやすくなります。
不動産は分割が難しく、「誰が相続するか」「どう評価するか」で揉めるケースが少なくありません。現金化することで、相続人間の争いを未然に防ぐ効果が期待できます。
離婚に伴う財産分与が必要なとき
離婚時の財産分与では、自宅の扱いが大きな課題になります。リースバックを利用すれば、住宅ローンの完済と現金化が同時におこなえるため、財産分与を円滑に進められます。
特に、一方が今の家に住み続けたい場合に有効です。自宅を売却して現金を分割したあと、住み続けたい側が賃貸契約を結ぶことで、子どもの転校を避けられるなどのメリットがあります。
離婚時の財産分与は、慎重に決めなければトラブルになる可能性があります。詳しくは、こちらの記事を参考にしてみてください。
リースバックのデメリットや「やばい」「やめた方がいい」と言われる理由
リースバックにはメリットがある一方で、注意すべきデメリットも存在します。特に、売却価格の低さと継続的な家賃負担は、利用前に十分理解しておく必要がある重要なポイントです。
売却価格が市場価格より低い
リースバックの売却価格は、通常の不動産売却と比べて低くなる傾向があります。これは仲介による売却ではなく、運営会社による直接買取であることが主な理由です。
- リースバックの売却価格は、一般的に市場価格の70%前後になるケースが多いとされています。たとえば、市場価格3,000万円の物件であれば、2,100万円程度での売却になるイメージです。
ただし、物件の立地・築年数・状態によって価格は大きく変動します。都心部の築浅物件であれば市場価格の80%以上で買い取られることもあれば、地方の築古物件では60%台になることもあります。
家賃負担が継続的に発生する
リースバックでは、売却後に毎月家賃を支払い続ける必要があります。この家賃負担が長期的に家計を圧迫する可能性があるため、十分な検討が必要です。
リースバックの家賃は、周辺の賃貸相場より高くなるケースが一般的です。これは、売却価格をもとに利回りで計算されるためで、必ずしも周辺相場に合わせて設定されるわけではありません。
家賃の決まり方
リースバックの家賃は、主に3つの要素で決定されます。
家賃の決まり方
- 売却価格:売却価格が高ければ、それに比例して家賃も高くなる
- 利回り:運営会社が設定する利回りによって家賃が変動する
- 物件の条件:立地・築年数・建物の状態などにより、運営会社が想定する利回りが異なる
一般的な賃貸物件のように「周辺相場」だけで決まるわけではない点を理解しておきましょう。
たとえば、売却価格2,000万円で年間家賃120万円(月10万円)の場合、利回りは6%です。運営会社は物件を買い取る際、維持管理コストやリスクを考慮して、一定の利回りを確保できる家賃を設定します。
リースバックの利回りは一般的に5〜8%程度が多く、物件の条件によって3〜10%の範囲で変動します。利回りが高いほど家賃も高くなるため、売却価格だけでなく利回りの確認も重要です。
売却価格別の家賃目安
売却価格と利回りの組み合わせによる、家賃の具体的な目安を表で示します。
| 利回り | 年間家賃 | 月額家賃 |
|---|---|---|
| 5% | 100万円 | 約8.3万円 |
| 6% | 120万円 | 約10万円 |
| 7% | 140万円 | 約11.7万円 |
| 8% | 160万円 | 約13.3万円 |
| 利回り | 年間家賃 | 月額家賃 |
|---|---|---|
| 5% | 150万円 | 約12.5万円 |
| 6% | 180万円 | 約15万円 |
| 7% | 210万円 | 約17.5万円 |
| 8% | 240万円 | 約20万円 |
この表からわかるように、売却価格が高くなるほど家賃も高額になります。「高く売れてよかった」と考えがちですが、長期的に支払う家賃総額を考慮しなければなりません。
たとえば、周辺の同条件物件の家賃相場が8万円でも、リースバックの家賃が10万円になることもあります。売却価格を優先して高く設定した結果、家賃も高額になるケースです。
つまり、リースバック利用時は長期的な視野で考えなければなりません。具体的なデメリットや注意点は、こちらのQ&Aも参考にしてみてください。
契約期間が決まっていることがある
リースバックの賃貸借契約には、長期間住み続けられない可能性があります。契約形態によって大きく異なるため、事前の確認が欠かせません。
「定期借家契約」は、あらかじめ決められた期間で契約が終了する契約形態です。契約期間は2〜3年に設定されることが多く、期間満了時には退去しなければなりません。
- 再契約は貸主と借主の双方の合意があれば可能ですが、貸主側の事情で更新を断られるケースもあります。たとえば、運営会社が物件を第三者に売却する場合、新しい所有者が退去を求めることもあります。
自由にリフォームができない
リースバック後は賃貸物件となるため、自由にリフォームや改修をおこなうことができません。所有権は運営会社に移っているため、大規模な変更には貸主の許可が必要です。
壁紙の張り替えや設備の交換など、建物の価値を変える工事は基本的に認められません。バリアフリー化や間取り変更なども、貸主の承諾なしにはおこなえないため注意が必要です。
修繕費用が借主負担になることが多い
通常の賃貸借では経年劣化や通常損耗に対する修繕義務は貸主(大家)側にあります。リースバックも形式上は賃貸借契約であるため、原則だけ見れば老朽化による雨漏りや給排水管の故障、シロアリ被害などは貸主側負担という整理になります。
- しかしリースバックでは「元の持ち主がそのまま住み続ける」という性質から、修繕費は借主負担とする特約を入れている事業者が少なくありません。また、「リースバック前からあった傷」「いつ付いたか分からない傷」を理由に、幅広く借主に修繕を負担させる条項を設けているケースもあります。
リースバックのメリット
リースバックには、通常の不動産売却や他の資金調達方法にはない独自のメリットがあります。最大の特徴は、資金を得ながら住環境を変えずに済む点です。
ここでは、リースバックのメリットを詳しく解説します。
まとまった資金を短期間で調達できる
リースバックは、他の資金調達方法と比べて現金化までのスピードが速いという特徴があります。売却代金の使い道に制限がないため、さまざまな目的に活用できます。
通常の不動産売却では、買主を探すために数ヶ月かかることが一般的です。仲介業者による広告活動や内覧対応が必要で、売却完了まで3〜6ヶ月程度を要します。
一方、リースバックでは運営会社が直接買い取るため、査定から契約、決済までが大幅に短縮されます。早ければ1週間程度、遅くても1ヶ月程度で売却代金を受け取れるケースが多くあります。
売却資金は自由に使える
リースバックで得た売却代金は、原則として使い道が自由です。住宅ローンの完済、事業資金、医療費、老後資金、相続税の納税資金など、あらゆる目的に使えます。
ただし、住宅ローンが残っている場合は、売却時に抵当権を抹消する必要があるため、ローン完済に優先的に充当する必要があります。
住み慣れた家に住み続けられる
リースバックの魅力は、売却後も同じ家に住み続けられることです。長年暮らした環境を変えずに資金を得られるため、生活の質を維持できます。
長年住み慣れた地域から離れることは、想像以上に大きなストレスになります。特に高齢者の場合、環境の変化が体調不良を引き起こすこともあります。
- リースバックなら、近所づきあいや通院先、買い物ルートなど、すべてが今まで通りです。子どもがいる家庭では、転校の必要もなく、友人関係を維持できます。
引越し費用が発生しない
通常の不動産売却では、引越し費用が大きな負担になります。引越し業者への支払い、新居の敷金・礼金・仲介手数料、不用品の処分費用など、数十万円から100万円以上かかることも珍しくありません。
リースバックでは引っ越しが不要なため、これらの費用を一切負担せずに済みます。売却代金をそのまま目的の用途に充てられるため、資金計画が立てやすくなります。
また、荷造りや荷ほどき、各種住所変更手続きなどの手間も省けるため、時間的・精神的な負担も軽減できます。
近隣に知られずにプライバシーを守れる
通常の不動産売却では、仲介業者が物件情報をインターネットやチラシで広告します。
リースバックは運営会社との直接取引で、広告活動がおこなわれません。外見上の変化もないため、自宅を売却したことを近所に知られにくいメリットがあります。
維持コストとリスクを削減できる
不動産を所有していると、さまざまな維持費用や管理の手間、リスクが発生します。リースバックで所有権を手放すことで、これらの負担から解放されます。
固定資産税・都市計画税が不要になる
固定資産税・都市計画税は、毎年1月1日時点の不動産所有者に課税される地方税です。リースバックで売却すれば、所有者ではなくなるため、翌年以降の固定資産税・都市計画税を支払う必要がありません。
固定資産税の税額は物件によって異なりますが、一般的な住宅で年間10万円〜30万円程度かかります。この負担がなくなることで、年間の支出を削減できます。
なお、売却した年の固定資産税については、売却時期に応じて売主と買主で清算するのが一般的です。
管理費の支払いが不要になる
マンションを所有している場合、管理費・修繕積立金・駐車場使用料などを毎月支払う必要があります。これらは所有者が負担する費用のため、リースバックで売却すれば支払い義務がなくなります。
特に、築年数が経過したマンションでは大規模修繕に備えて修繕積立金が値上げされることがあり、家計を圧迫する要因になります。リースバックなら、これらの不確定な費用増加リスクから解放されます。
災害リスクを軽減できる
地震・台風・水害などの自然災害により建物が損壊した場合、所有者は資産価値の減少というリスクを負います。リースバックで所有権を手放していれば、このリスクは運営会社が負うことになります。
日本は地震大国であり、近年は豪雨による水害も増加しています。災害により建物の価値が大きく下がったり、住めなくなったりする可能性がありますが、賃貸物件として住んでいる場合は財産的な損失を受けません(実際には家財の損害や引越し費用は発生する)。
ただし、災害により住み続けることが困難になった場合は、転居する必要があります。賃貸借契約の内容によっては、契約解除の条件も確認しておきましょう。
将来的に買い戻せることがある
リースバックでは、将来的に自宅を買い戻すことも可能です。一時的な資金調達が目的の場合、買戻しの条件を契約に盛り込むことで、再び所有者になれます。
買戻し特約は、民法第579条に規定される制度です。不動産の売主が、代金と契約費用を買主に返還することで、売買契約を解除できる権利を定めます。
この特約を設定しておけば、売却後に資金が準備できたタイミングで買い戻すことが可能です。ただし、民法第580条により、買戻し期間は最長10年までと定められています。
リースバックで後悔しないための注意点
リースバックは便利な仕組みですが、契約内容を十分に確認せずに進めると、後悔する可能性があります。特に、自宅という大きな資産を扱う取引のため、慎重な判断が必要です。
売却価格が適正かを確認する
リースバックの売却価格は、運営会社によって異なります。1社だけの査定で判断せず、複数社に見積もりを依頼して相場感を把握しましょう。
- 一般的には市場価格の70%前後が目安ですが、物件の条件や運営会社の方針によって60〜80%の範囲で変動します。著しく安い価格を提示された場合は、その理由を確認することが重要です。
また、インターネットの不動産査定サイトなどで市場価格の目安を調べておくことをおすすめします。市場価格と比較することで、提示された売却価格が妥当かどうか判断しやすくなります。
家賃設定が妥当か検証する
売却価格だけでなく、家賃設定も重要なチェックポイントです。家賃が高すぎると、長期的に家計を圧迫し、支払いが困難になる可能性があります。
周辺の同条件物件の賃貸相場を調べ、リースバックの家賃と比較しましょう。不動産情報サイトで同じエリアの似た物件を検索すれば、相場感を把握できます。
- また、月々の収入に対して家賃が占める割合も確認が必要です。一般的に、収入の3分の1以内に収めることが理想とされています。年金収入だけで家賃を支払い続けられるかなど、長期的な視点で検討しましょう。
契約の借家形態と契約期間を必ず確認する
賃貸借契約が定期借家契約か普通借家契約かによって、長期間住み続けられるかどうかが大きく変わります。契約形態と契約期間は、必ず事前に確認しましょう。
定期借家契約の場合、契約期間が2年程度と短く設定されていることが多くあります。再契約が可能かどうか、再契約時の条件(家賃改定の可能性など)も確認が必要です。
長く住み続けたい場合は、普通借家契約を選択できる運営会社を探すことをおすすめします。ただし、契約形態によって売却価格や家賃が変わる可能性があるため、総合的に判断しましょう。
買戻し条件を確認する
将来的に買い戻しを検討している場合、口約束ではなく必ず契約書に明記する必要があります。書面で残しておかないと、後から買い戻しができないトラブルに発展する可能性があります。
買戻し価格、買戻し可能期間、買戻しの条件を具体的に定めましょう。特に、家賃滞納があった場合に買戻し権利が消滅する条項が含まれていることが多いため、内容をしっかり確認してください。
修繕費の負担区分を確認する
リースバックの賃貸借契約では、修繕費の負担区分が通常の賃貸契約と異なる場合があります。借主負担となっている契約も多いため、必ず確認しましょう。
給湯器の故障や水回りの不具合、エアコンの交換など、設備の修繕には高額な費用がかかることがあります。これらを借主が負担する契約の場合、突発的な出費に備える必要があります。
運営会社の信頼性を確認する
リースバック運営会社の信頼性は、長期的に安心して住み続けるために重要な要素です。実績が乏しい会社や財務状況が不安定な会社との契約は避けるべきです。
運営会社の事業年数、取引実績、資本金、口コミや評判などを事前に調べましょう。上場企業や大手不動産会社が運営するサービスであれば、比較的安心して利用できます。
売却先と賃貸人が同一か確認する
運営会社によっては、物件の売却先と賃貸借契約の貸主が異なる場合があります。この場合、契約更新や再契約の際にトラブルが発生する可能性があるため、売却先と賃貸人が同一の会社を選ぶとよいでしょう。
たとえば、A社に売却したあと、B社と賃貸借契約を結ぶケースです。更新時にB社が契約を更新しない判断をしたり、突然貸主が変更されたりするリスクがあります。
リースバックのよくあるトラブル事例
リースバックは便利な仕組みですが、契約内容の理解不足や事前確認の不足により、トラブルに発展するケースも存在します。実際に起きたトラブル事例を知ることで、同じ失敗を避けられます。
家賃が高く支払い困難になってしまった
売却価格を優先して高く設定した結果、家賃も高額になり、毎月の支払いが家計を圧迫するケースがあります。当初は問題なくても、収入の減少や想定外の出費により、支払いが困難になる可能性があります。
家賃を滞納すると、最終的には退去を求められることになります。
対策としては、契約前に、長期的な収入と支出を見通し、無理のない家賃設定にすることが重要です。長期的に不安がある場合は、売却価格を少し下げてでも、家賃を低く設定できないか運営会社と交渉しましょう。
契約更新できず退去を迫られてしまった
定期借家契約で2年の契約期間を設定していたところ、期間満了時に運営会社から更新を断られ、退去しなければならなくなったケースです。長く住み続けるつもりでいたのに、想定外の退去を迫られる事態になります。
運営会社が物件を第三者に売却する場合や、事業方針の変更などにより、再契約を断られる可能性があります。定期借家契約では、貸主に更新義務がないため、このようなトラブルが発生します。
- 長期間住み続けたい場合は、普通借家契約を選択できる運営会社を選びましょう。普通借家契約であれば、貸主からの更新拒絶には正当事由が必要で、借主の居住権が強く保護されます。
運営会社が倒産してしまった
契約中にリースバック運営会社が倒産し、物件が別の会社や個人に売却されたケースです。
原則として、建物が第三者に売却されても、賃貸借契約は新しい所有者に承継され、賃借人はそのまま住み続けられます。賃貸借契約は原則として新所有者に引き継がれますが、定期借家契約の場合や契約条件によっては、新所有者が契約解除を主張することもあります。
ただし、定期借家契約で期間満了を理由に更新を拒否されたり、更新時の条件(家賃増額など)をめぐって新所有者とトラブルになる可能性はゼロではありません。
そのため、契約前に運営会社の財務状況や事業実績を確認しましょう。上場企業や大手不動産会社が運営するサービスであれば、倒産リスクは比較的低いといえます。
買戻しができなかった
将来的に買い戻す約束だったにもかかわらず、実際には買い戻せなかったケースです。口頭での約束だけで契約書に明記していなかった場合や、家賃滞納により買戻し権利が消滅した場合などに発生します。
また、運営会社が物件を第三者に転売してしまい、買戻しの相手がいなくなるトラブルもあります。買戻し期間を過ぎてしまい、権利が消滅するケースも少なくありません。
買戻しを検討している場合は、必ず売買契約書に買戻し特約または再売買の予約を明記しましょう。買戻し価格、買戻し可能期間、買戻しの条件を具体的に定めることが重要です。
このように、リースバックにはさまざまなトラブルのリスクが孕んでいる点に留意しましょう。こちらのQ&Aも、あわせて参考にしてみてください。
リースバックと他の資金調達法との違い
自宅を活用した資金調達方法は、リースバック以外にも複数の選択肢があります。それぞれの仕組みや特徴が異なるため、自分の状況や目的に合った方法を選ぶことが重要です。
リースバックと通常の売却との違い
通常の不動産売却は、仲介業者を通じて一般の購入希望者に売却する方法です。リースバックと比べて、メリット・デメリットが大きく異なります。
| 項目 | リースバック | 通常売却 |
|---|---|---|
| 売却価格 | 市場価格の70%前後 | 市場価格での売却が可能 |
| 買主 | リースバック運営会社 | 一般の購入希望者 |
| 売却方法 | 直接買取 | 仲介業者を通じた売却 |
| 資金化までの期間 | 1週間〜1ヶ月程度 | 3〜6ヶ月程度 |
| 売却後の居住 | 賃貸として住み続けられる | 退去が必要 |
| 引越し | 不要 | 必要 |
| 引越し費用 | かからない | 数十万〜100万円以上 |
| 毎月の支払い | 家賃が発生 | なし(新居の費用は別) |
| 広告活動 | なし | あり(近隣に知られやすい) |
| 内覧対応 | 不要 | 必要 |
| 所有権 | 運営会社に移転 | 買主に移転 |
| 買戻し | 可能(特約があれば) | 原則不可 |
できるだけ高く売却したい場合は通常売却、住み続けながら資金を得たい場合はリースバックが適しています。売却後の住まいをどうするかが、選択の重要なポイントです。
リースバックとリバースモーゲージとの違い
リバースモーゲージは、自宅を担保に金融機関から融資を受ける仕組みです。自宅に住み続けながら資金を得られる点はリースバックと似ていますが、基本的な仕組みが大きく異なります。
リースバックとリバースモーゲージの主な違いを表にまとめました。
| 項目 | リースバック | リバースモーゲージ |
|---|---|---|
| 契約形態 | 不動産売却+賃貸借契約 | 金銭消費貸借契約(融資) |
| 所有権 | 運営会社に移転 | 本人が保持 |
| 年齢制限 | なし | あり(通常60歳以上) |
| 借入の有無 | なし(売却) | あり(融資) |
| 資金使途 | 自由 | 原則生活資金のみ |
| 毎月の支払い | 家賃 | 利息 |
| 契約終了条件 | 退去または買戻し | 死亡または借入金完済 |
| 担保 | なし | 自宅に抵当権設定 |
自宅を資産として残したい場合や相続を考えている場合はリバースモーゲージ、住宅ローンが残っている場合や事業資金が必要な場合はリースバックが適しています。
リースバックとリバースモーゲージは似ていますが、特徴が異なります。詳しくは、こちらのQ&Aを参考にしてみてください。
リースバックと不動産担保ローンとの違い
不動産担保ローンは、自宅を含む不動産を担保として金融機関から融資を受ける方法です。リバースモーゲージと似ていますが、返済方法や対象年齢が異なります。
| 項目 | リースバック | 不動産担保ローン |
|---|---|---|
| 契約形態 | 不動産売却+賃貸借契約 | 金銭消費貸借契約(融資) |
| 所有権 | 運営会社に移転 | 本人が保持 |
| 年齢制限 | なし | なし、または緩やか |
| 資金の性質 | 売却代金(借入ではない) | 借入金(融資) |
| 担保 | なし(売却済み) | 自宅に抵当権設定 |
| 資金使途 | 自由 | 比較的自由 |
| 毎月の支払い | 家賃 | 元本+利息 |
| 返済期間 | なし(家賃支払いのみ) | 10〜35年程度 |
| 固定資産税 | 不要(所有者でない) | 必要(所有者のまま) |
| 維持管理費 | 原則不要 | 必要(所有者負担) |
| 完済後 | 賃貸として継続 | 所有権を保持、担保解除 |
| 返済不能時 | 家賃滞納で退去 | 担保不動産を売却して返済 |
| 相続 | 賃借権のみ | 不動産を相続可能 |
所有権を保持したまま資金調達したい場合は不動産担保ローン、所有権を手放してもよく維持費用から解放されたい場合はリースバックが適しています。完済後も自宅を資産として残したい方には、不動産担保ローンがおすすめです。
リースバックの利用が向いている人・検討すべき人
リースバックは、特定の状況やニーズを持つ方に適した資金調達方法です。すべての人に最適とは限らないため、自分の状況と照らし合わせて判断することが重要です。
ここでは、リースバックの利用が向いている5つのケースを紹介します。
今すぐまとまった資金が必要な人
急な資金需要があり、できるだけ早くまとまったお金を用意したい方に適しています。医療費や介護費用、事業資金、住宅ローンの一括返済など、使途は問いません。
リースバックなら、通常の不動産売却より短期間で資金化できます。仲介による売却では買主を探すのに数ヶ月かかりますが、リースバックは最短1週間、通常1ヶ月程度で売却代金を受け取れます。
家は手放したいものの住環境を変えたくない人
長年住み慣れた家や地域から離れたくない方にとって、リースバックは理想的な選択肢です。資金を得ながら、生活環境を一切変えずに済みます。
特に高齢者の場合、環境の変化が心身に大きな負担をかけることがあります。通院先や買い物ルート、近所づきあいなど、長年築いてきた生活基盤を維持できる点は大きなメリットです。
また、子どもがいる家庭では、転校を避けられる利点があります。友人関係や学校生活を継続できるため、子どもへの影響を最小限に抑えられます。
住居の固定費を削減したい人
住宅ローンの返済負担が重く、毎月の固定費を削減したい方にリースバックは効果的です。売却代金でローンを完済し、家賃がローン返済額より低ければ、月々の支出を減らせます。
また、固定資産税・都市計画税・マンションの管理費・修繕積立金などの維持費用がなくなります。これらの費用は毎年・毎月発生するため、長期的には大きな削減効果があります。
ただし、家賃設定が高い場合は固定費削減の効果が薄れます。家賃と現在の支出を比較し、本当に削減できるか事前に確認しましょう。
住宅ローンの返済が困難になった人
住宅ローンの返済が滞っており、金融機関から督促を受けている方や、任意売却を検討している方にとって、リースバックは重要な選択肢となります。
競売にかけられると、市場価格より大幅に安い価格で売却され、強制的に退去しなければなりません。リースバックなら適正価格で売却でき、住み続けられるうえ、周囲に経済的な事情を知られにくいメリットがあります。
- 売却代金でローンを完済できれば、残債の心配もなくなります。ただし、ローン残債が売却価格を上回る「オーバーローン」の場合、追加資金が必要になることがあるため、早めに運営会社や金融機関に相談しましょう。
リースバックを利用するときの流れ
リースバックを利用する際には、早ければ1週間程度、通常は1ヶ月程度で完了するのが特徴です。
各段階で確認すべきポイントを押さえておくことで、スムーズに手続きを進められます。
運営会社に相談・仮査定を依頼する
まずはリースバック運営会社に相談し、仮査定を依頼します。この段階では、物件の概要をもとに概算の売却価格と家賃が提示されます。
相談時には、固定資産税・都市計画税の納税通知書や、マンションの場合は管理費・修繕積立金の金額がわかる資料を用意しておくとスムーズです。住宅ローンが残っている場合は、残債額も伝える必要があります。
仮査定の結果は、運営会社によっては即日または数日以内に提示されます。この時点では正式な査定ではないため、あくまで目安として捉えましょう。複数の運営会社に仮査定を依頼し、条件を比較することをおすすめします。
現地調査と本査定を受ける
仮査定の内容に納得できた場合、次に現地調査がおこなわれます。運営会社の担当者や査定会社が実際に物件を訪問し、建物の状態や周辺環境を詳しく確認します。
調査では、間取り図面との相違、設備の状況、雨漏りやひび割れなどの不具合、日当たりや眺望などがチェックされます。マンションの場合は、管理状態や共用部分の状況も評価対象です。
本調査の結果をもとに、正式な売却価格と家賃が決定されます。仮査定と異なる金額になる可能性もあるため、査定額が変わった理由を確認しましょう。
契約を締結する
本査定の条件に合意できたら、売買契約と賃貸借契約を締結します。この2つの契約は通常、同じタイミングでおこなわれます。
売買契約
売買契約では、売却価格・手付金・決済日・引き渡し条件などを取り決めます。住宅ローンが残っている場合は、抵当権の抹消手続きについても確認が必要です。
契約書には、物件の表示、売買代金、支払方法、所有権移転時期、瑕疵担保責任などが記載されます。特に、決済時に受け取れる金額(売却価格から諸費用を差し引いた額)を明確にしておきましょう。
賃貸借契約
賃貸借契約では、家賃・敷金・契約期間・契約形態(普通借家契約か定期借家契約か)・更新の可否・修繕費の負担区分などを決定します。
特に重要なのは契約形態です。定期借家契約の場合、契約期間や再契約の条件を必ず確認しましょう。普通借家契約であれば、更新時の条件や家賃改定の可能性についても確認が必要です。
修繕費の負担についても、どの範囲まで借主が負担するのか、具体的に確認しておくことをおすすめします。給湯器や水回りの故障など、高額な修繕が発生する可能性があります。
買戻し特約・再売買予約
将来的に買い戻しを検討している場合は、売買契約時に買戻し特約または再売買の予約を設定します。これらの条件は口約束ではなく、必ず契約書に明記する必要があります。
買戻し価格、買戻し可能期間、買戻しの条件(家賃滞納がないことなど)を具体的に定めます。再売買の予約の場合、買戻し価格は売却価格の110〜130%程度に設定されることが一般的です。
決済・引き渡し
契約締結後、決済日に売買代金の受け渡しと所有権移転登記がおこなわれます。
決済時には、売買代金から諸費用(登記費用、仲介手数料、抵当権抹消費用など)が清算されます。住宅ローンが残っている場合は、金融機関への返済もこのタイミングでおこなわれます。
- 所有権移転登記が完了すると、賃貸借契約が開始されます。決済日から家賃の支払いが始まるため、初回家賃の支払い日や支払い方法を確認しておきましょう。引っ越しの必要はなく、そのまま住み続けられます。
住宅ローン残債がある場合にリースバックを利用する方法
住宅ローンが残っている状態でもリースバックは利用できますが、いくつかの条件をクリアする必要があります。実際に、住宅ローンの返済負担軽減を目的にリースバックを利用する方は少なくありません。
抵当権の抹消が必要になる
住宅ローンを借りている場合、金融機関は自宅に抵当権を設定しています。抵当権とは、ローンの返済が滞った際に、金融機関が不動産を差し押さえて売却できる権利です。
リースバックで不動産を売却するには、この抵当権を抹消しなければなりません。抵当権が付いたままでは、所有権を買主に移転できないためです。抵当権の抹消には、住宅ローンの完済が必須条件となります。
住宅ローンが残っている場合は、リースバック運営会社に必ず伝えましょう。残債額によっては利用できないケースもあるため、早めに相談することが重要です。
売却代金で完済できるかどうかを確認する
最も一般的なのは、リースバックの売却代金を使って住宅ローンを完済する方法です。売却価格がローン残債を上回っていれば、この方法で問題なく手続きを進められます。
たとえば、住宅ローンの残債が1,800万円で、リースバックの売却価格が2,000万円の場合、売却代金からローンを完済できます。残った200万円から諸費用を差し引いた金額が、手元に残る資金です。
決済時には、売却代金を受け取ると同時に、金融機関への返済と抵当権抹消手続きがおこなわれます。これらの手続きは、通常、司法書士が仲介して同日中に完了します。
残債が多い場合は自己資金で補填する
売却価格よりも住宅ローンの残債が多い「オーバーローン」の状態では、売却代金だけでは完済できません。この場合、不足分を自己資金で補えば、リースバックを利用できます。たとえば、残債2,000万円に対して売却価格が1,800万円の場合、200万円を自己資金で用意すれば完済できます。
将来的なリースバックを考える場合は、マイホームを購入する段階で慎重に判断しなければなりません。住宅ローン控除の仕組みについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
自己資金で補填できないときの対処法
無担保ローンを利用する
不足分を無担保ローンで借り入れる方法もあります。ただし、新たな借入が発生するため、返済能力を慎重に検討する必要があります。金融機関の審査も必要です。
任意売却を検討する
オーバーローンで自己資金もない場合は、任意売却という選択肢があります。任意売却とは、金融機関の同意を得て、ローン残債を下回る価格で不動産を売却する方法です。
任意売却でもリースバックを組み合わせることが可能な場合があります。ただし、金融機関との交渉が必要で、手続きが複雑になります。専門家のサポートを受けることをおすすめします。
信頼できるリースバック運営会社の選び方
リースバック運営会社は数多く存在し、それぞれ提供する条件やサービス内容が異なります。最適な会社を選ぶことが、満足度の高いリースバック利用につながります。
複数社で相見積もりを取得する
リースバックを検討する際、最も重要なのは複数の運営会社から見積もりを取ることです。1社だけで決めてしまうと、条件が適正かどうか判断できません。
運営会社によって査定基準や利回り設定が異なるため、同じ物件でも売却価格や家賃に数百万円の差が出ることがあります。最低でも3社以上、できれば5社程度から見積もりを取ることをおすすめします。
見積もりを比較する際は、売却価格だけでなく、家賃・契約期間・契約形態・修繕費の負担区分など、総合的に判断しましょう。最も売却価格が高い会社が、必ずしも最良の選択とは限りません。
売却価格と家賃のバランスを比較検討する
売却価格が高ければ良いというわけではありません。売却価格と家賃は連動しているため、売却価格が高いほど家賃も高くなる傾向があります。
長期的に住み続ける予定の場合、家賃の総支払額が重要になります。たとえば、A社が売却価格2,200万円・家賃月12万円、B社が売却価格2,000万円・家賃月10万円を提示した場合を考えてみましょう。
自分の利用目的に応じて、売却価格と家賃のどちらを優先するか決めましょう。まとまった資金が最優先なら売却価格重視、長く住み続けたいなら家賃重視で選ぶことをおすすめします。
賃貸借の契約形態を確認する
賃貸借契約が定期借家契約か普通借家契約かによって、長期間住み続けられるかどうかが決まります。契約形態は運営会社選びの重要な判断基準です。
定期借家契約を採用している運営会社が多いですが、中には普通借家契約を選択できる会社もあります。長く住み続けたい場合は、普通借家契約を提供している会社を優先的に検討しましょう。
定期借家契約を選ぶ場合でも、契約期間の長さや再契約の可能性を確認してください。2年契約と5年契約では、安心感が大きく異なります。再契約の実績や方針についても、事前に質問することをおすすめします。
運営会社のサポート体制と実績を確認する
リースバック運営会社のサポート体制や実績も、重要な選択基準です。契約後も長期的な付き合いになるため、信頼できる会社を選ぶことが大切です。
設立間もない会社より、長年の実績がある会社のほうが安心して利用できます。上場企業や大手不動産会社が運営するサービスであれば、倒産リスクも比較的低いといえます。
質問に対して明確に回答してくれるか、デメリットも含めて説明してくれるかを確認しましょう。契約を急がせたり、不明瞭な説明をしたりする会社は避けるべきです。設備の故障時の対応、家賃支払いに関する相談窓口、契約更新時のサポートなど、長期的に安心して住み続けられる体制が整っているかチェックしましょう。
リースバックに関してあわせて理解しておきたい仕組み
リースバックを検討する際、多くの方が同じような疑問を抱きます。ここでは、特によくある質問とその回答を紹介します。
リースバックで売却した家を買い戻すための条件
買い戻すには、売買契約時に「買戻し特約」または「再売買の予約」を契約書に明記する必要があります。買戻し価格は売却価格の110〜130%程度が一般的で、買戻し可能期間も事前に設定します。
家賃滞納があると買戻し権利を失う契約が多いため、家賃を確実に支払い続けることが重要です。また、運営会社が第三者に転売しないよう制限条項を設けることもおすすめします。
さらに詳しく知りたい場合は、以下のQ&Aも参考にしてみてください。
リースバックを利用した翌年以降の固定資産税
リースバックで自宅を売却すると、所有者ではなくなるため翌年以降の固定資産税を納める必要はありません。固定資産税は毎年1月1日時点の所有者に課税されるため、売却後の1月1日時点では運営会社が納税義務者となります。
ただし、売却した年の固定資産税については、売却時期に応じて売主と買主で清算するのが一般的です。都市計画税も同様に、売却後は支払い義務がなくなります。
この記事のまとめ
リースバックは、住環境を変えずに早期に資金を確保できる有効な手段ですが、売却価格の低下や高めの家賃、契約期間の制約など長期的に影響する条件を十分確認する必要があります。
特に家賃設定や借家形態、修繕負担などの確認が甘いと、後悔につながる可能性があるため注意が必要です。他の資金調達方法と比較し、自身の目的に最適かどうか検討しましょう。不安が残る場合は、専門家に相談しながら契約内容を整理し、将来の負担を見据えた選択を行いましょう。投資のコンシェルジュでは、リースバックンの必要性や老後資金のシミュレーションなどを無料で相談できるため、ぜひお気軽にご利用ください。

金融系ライター
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆実績あり。
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆実績あり。
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定期借家契約
定期借家契約とは、あらかじめ契約期間を定め、その期間が満了すると借主が退去することを前提とした賃貸借契約のことです。通常の借家契約(普通借家契約)と異なり、契約期間が終了しても自動更新されることはなく、貸主は正当な理由がなくても契約終了を主張できます。 この契約を成立させるには、書面による契約と、契約内容を借主に明示する説明が必要とされています。資産運用の視点では、不動産オーナーが賃貸経営を柔軟に行うための手段として用いられることが多く、将来的な売却や建替え、用途変更を見据えた計画的な運用が可能になる契約形態です。ただし、借主にとっては契約満了後の住居確保の必要性があるため、契約内容をよく理解したうえで利用することが大切です。
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普通借家契約とは、住居用の不動産を借りるときに使われる一般的な賃貸契約の形です。この契約では、借主の住む権利が法律でしっかりと守られており、貸主が契約期間中に一方的に契約を終了させることは原則としてできません。契約期間は通常2年間が多いですが、それより短く設定することも可能です。また、契約期間が終了しても、借主が引き続き住み続けたいと希望すれば、更新が可能な仕組みになっています。このように、安定して長く住みたい人にとって安心できる契約形式です。ただし、更新のたびに家賃が見直される可能性がある点には注意が必要です。
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賃貸借契約とは、物の所有者(貸主)が相手方(借主)に対して、その物を一定期間使わせ、その代わりに借主が賃料を支払うという契約のことです。不動産では、アパートやマンション、店舗などの建物や土地の貸し借りが一般的な対象となります。 この契約によって、借主は物件を使用・占有する権利を得ますが、所有権は貸主のままとなります。契約には契約期間、賃料、解約条件、原状回復義務などの重要事項が含まれ、両者の権利と義務を明確にすることでトラブルを防ぐ役割があります。資産運用においては、収益不動産の管理や投資判断に関わる基本契約であり、安定的な家賃収入の仕組みを理解する上でも重要な概念です。
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リースバック(セール・アンド・リースバック)とは、自分が所有している不動産などの資産をいったん他の企業や投資家に売却し、その後は賃貸契約を結んで引き続きその資産を使用し続ける仕組みです。たとえば、マイホームを売却してまとまった現金を得たあとも、そのまま同じ家に住み続けるといったケースが代表的です。 この方法は、資産を現金化しつつ、生活スタイルを大きく変えたくないときに有効です。主に高齢者の老後資金確保や、企業が設備を手放さずに資金調達したいときに使われることが多いです。注意点としては、売却後の賃料負担や、将来的にその物件を買い戻せるかどうかといった条件をよく確認することが大切です。
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抵当権とは、債権者(お金を貸した側)が、債務者(お金を借りた側)から返済を受けられない場合に備えて、不動産などの特定の財産を担保に取り、その財産を競売にかけて優先的に弁済を受けることができる権利のことです。たとえば住宅ローンを借りる際、銀行は融資の対象となる不動産に抵当権を設定します。 債務者が返済を滞らせた場合、金融機関はその不動産を差し押さえて競売にかけ、売却代金から返済を受けることができます。抵当権は通常、登記によって第三者にも対抗できるようにされ、担保の信頼性を高めています。債務の履行がある限り物件は自由に使用・居住できるため、債務者の不利益を最小限に抑えつつ、債権者の回収権を保護する仕組みです。
都市計画税
都市計画税とは、都市の整備や発展に必要な費用をまかなうために、土地や建物などの不動産を持っている人に対して課される地方税の一つです。この税金は、市街化区域と呼ばれるエリア内にある不動産が対象となり、毎年固定資産税と一緒に請求されます。 税率は法律で上限が決められており、多くの自治体では0.3%以下に設定されています。徴収された税金は、道路や公園の整備、下水道の建設、都市の安全対策など、住みやすい街づくりのために使われます。不動産投資を考える際には、この都市計画税も維持費の一部として意識することが大切です。
固定資産税
固定資産税は、土地や建物、償却資産(事業用設備など)を所有している人が、その資産の所在する市区町村に納める地方税です。この税金は、毎年1月1日時点の固定資産の所有者に課されます。課税額は、資産の「課税標準額」に基づき、標準税率1.4%を乗じて算出されますが、市区町村によっては条例で異なる場合もあります。また、土地や住宅には負担軽減措置が設けられることがあり、課税額が抑えられるケースもあります。固定資産税は、その地域のインフラや公共サービスの維持・運営を支える重要な財源となっており、納税通知書は通常、毎年4~6月頃に送付されます。不動産を所有する際には、この税金を考慮して資産計画を立てることが重要です。
所有権
所有権とは、ある物や財産を自分のものとして自由に使ったり、他人に貸したり、売ったりできる法的な権利のことです。たとえば、不動産や株式、預貯金などの資産に対して、この所有権を持っている人は、それらをどう扱うかを自分で決めることができます。 ただし、自由に使えるといっても、法律や契約によって制限されることもあります。資産運用の場面では、誰がどの資産の所有権を持っているかが非常に重要であり、相続や贈与、投資の管理など、多くの場面で基本となる考え方です。
買戻し特約
買戻し特約とは、不動産や株式などの資産を売却したあと、あらかじめ定めた条件のもとで売主がその資産を将来的に買い戻せるようにする契約上の取り決めです。この特約があることで、売却していったん現金化した資産を、一定の期間や価格で元の所有者が取り戻せる可能性が残されます。 不動産のリースバック取引や企業間の資本提携、M&Aなどで使われることがあり、将来的な資産の再取得を視野に入れて柔軟な資産運用ができるメリットがあります。ただし、買戻しには期限や価格、手続きの条件などが細かく定められており、実際に行使できるかどうかは契約内容次第ですので、事前によく確認する必要があります。
瑕疵担保責任(かしたんぽ)
瑕疵担保責任とは、売買や請負契約で引き渡された物や建物に、通常有すべき品質や性能を欠く欠陥(瑕疵)があった場合に、売主や請負人が負う責任のことです。従来の民法では、買主が瑕疵を発見した場合、契約の解除や損害賠償請求ができると定められていました。2020年の民法改正により、この概念は「契約不適合責任」に統合されましたが、不動産取引や中古住宅の売買などでは、慣習的に「瑕疵担保責任」という言葉が使われることがあります。 資産運用の実務では、不動産投資やM&Aなどで物件や事業に隠れた欠陥がないかを確認するデューデリジェンスが、この責任回避の重要な手段となります。
任意売却
任意売却とは、住宅ローンの返済が困難になった場合に、抵当権者(金融機関)など関係債権者の同意を得て、競売の実施前に市場で売却し、売却代金で抵当権等を抹消する手続きです。 通常は抵当権を抹消できない限り自由に売却できませんが、任意売却では売却価格がローン残高を下回っても、債権者が残債の取り扱い(無担保化・分割返済など)に合意すれば売却が可能です。複数の担保権や差押えがある場合は、原則として全ての債権者の同意が必要になります。 この方法を利用することで、競売よりも高い価格で売れる可能性があり、生活再建の足がかりにもなります。さらに、引っ越しの時期や条件などもある程度調整できるため、精神的な負担も軽減されます。不動産投資や住宅購入後のリスク管理を考える上でも、任意売却という選択肢を知っておくことは非常に重要です。
競売(けいばい)
競売(けいばい)とは、債務者がローンなどの借金を返済できなくなった場合に、その人が所有する不動産や資産を裁判所の手続きによって強制的に売却し、売却代金を債権者に配当する制度のことをいいます。特に不動産競売が一般的で、住宅ローンの滞納が続いた場合に金融機関が申し立てることによって実施されます。 競売は「公的なオークション」の一種であり、裁判所を通じて実施される点で、任意売却(当事者間の合意による売却)とは異なります。購入希望者は誰でも入札に参加でき、最も高い価格を提示した人が落札者となります。落札された金額は、債権者への返済に充てられ、余剰があれば債務者に戻されます。 一般の不動産取引と比べて、競売物件は相場より安く購入できる可能性がある一方で、内覧ができなかったり、占有者が残っていたりと、法的・実務的なリスクがあるため、注意が必要です。資産運用や不動産投資の観点でも、競売は慎重な情報収集と判断が求められる制度です。
オーバーローン
オーバーローンは、特に不動産や自動車の購入時によく見られる現象で、購入する物件や商品の価値を超える金額を借入れることを指します。この状況は、買い手が元手として持ち合わせている現金が少ない場合や、物件の価格交渉がうまくいかず、購入価格が市場価格を上回った際に発生することがあります。 オーバーローンにはリスクが伴います。たとえば、資産価値が借入額よりも下落した場合、いわゆる「水面下の負債」が生じ、売却時にローン残高が資産価値を上回ることになり、売却によって借金が完済されない可能性があります。また、オーバーローンは返済負担も大きくなりがちで、借り手の財政状態を圧迫することにもつながります。 このため、オーバーローンは慎重に検討すべき選択肢であり、借り手は自身の返済能力や将来の資産価値の見込みを十分に評価することが求められます。また、オーバーローンに対する法的な規制や条件は地域や金融機関によって異なるため、契約前には詳細をよく確認することが重要です。
リバースモーゲージ
リバースモーゲージとは、自宅などの不動産を担保にして金融機関からお金を借りる仕組みです。ただし、通常のローンとは違い、借りたお金は借り手が亡くなったあとや、施設に入所して自宅に住まなくなったときに、担保となっている自宅を売却することで一括返済されます。高齢者が老後の生活資金を確保するために利用することが多く、自宅に住み続けながら現金を得られるという特徴があります。借入中は利息だけを支払うか、返済を一切行わずに済むタイプもありますが、最終的に不動産を手放す可能性があることに注意が必要です。
リ・バース60
リ・バース60とは、住宅金融支援機構が提供している「リバースモーゲージ型住宅ローン」の一種で、主に60歳以上の高齢者を対象とした仕組みです。自宅を担保にして資金を借り入れ、借入金の返済は利用者の死亡後に自宅を売却することで行われます。つまり、利用者は生存中に返済の負担を負わず、自宅に住み続けながら老後資金を得ることができる制度です。 リ・バース60では、融資額や金利は自宅の評価額や年齢、金利タイプなどによって決まり、用途としては生活費の補填、リフォーム資金、医療・介護費用などに充てられることが多いです。資産運用の観点では、自宅という「不動産資産」を現金化して老後の生活を支える手段として注目されています。ただし、相続時に自宅を処分して返済に充てる必要があるため、家族との合意形成も重要なポイントになります。
修繕積立金
修繕積立金とは、マンションなどの共同住宅において、将来的に必要となる建物や設備の大規模修繕に備えて住民が毎月支払う積立金のことです。エレベーターの交換や外壁の補修、屋上防水のやり直しなど、建物を長く安全・快適に使い続けるためには一定期間ごとに多額の修繕費用がかかるため、その費用をあらかじめ分担して積み立てておく仕組みです。 管理組合が資金を管理し、長期修繕計画に基づいて使用されるのが一般的です。購入時には月額の負担額や将来の増額予定、過去の使途なども確認しておくことが大切です。修繕積立金が十分に確保されていない場合、突発的な修繕に対応できず、一時金の徴収や建物の劣化による資産価値の低下につながる恐れがあります。
管理費(管理コスト)
管理費(管理コスト)とは、企業や投資ファンドなどが運営・管理を行うために必要とする費用のことをいいます。具体的には、人件費、事務所の維持費、システム運用費、監査費用、法律・会計のアドバイザリー報酬などが含まれます。たとえば、投資信託や不動産ファンドでは、投資家から集めた資金を運用するための管理体制にかかる費用として、定期的に管理費が発生します。 これは投資の実質的なコストに影響を与えるため、投資家にとっては注意すべき項目となります。また、企業経営においても、管理費を効率よく抑えることで収益性の向上が図られることがあります。つまり、管理費は「見えにくいコスト」ですが、資産運用の成果や企業の競争力に直結する重要な経費です。
利回り
利回りとは、投資で得られた収益を投下元本に対する割合で示し、異なる商品や期間を比較するときの共通尺度になります。 計算式は「(期末評価額+分配金等-期首元本)÷期首元本」で、原則として年率に換算して示します。この“年率”をどの期間で切り取るかによって、利回りは年間リターンとトータルリターンの二つに大別されます。 年間リターンは「ある1年間だけの利回り」を示す瞬間値で、直近の運用成績や市場の勢いを把握するのに適しています。トータルリターンは「保有開始から売却・償還までの累積リターン」を示し、長期投資の成果を測る指標です。保有期間が異なる商品どうしを比べるときは、トータルリターンを年平均成長率(CAGR)に換算して年率をそろすことで、複利効果を含めた公平な比較ができます。 債券なら市場価格を反映した現在利回りや償還までの総収益を年率化した最終利回り(YTM)、株式なら株価に対する年間配当の割合である配当利回り、不動産投資なら純賃料収入を物件価格で割ったネット利回りと、対象資産ごとに計算対象は変わります。 また、名目利回りだけでは購買力の変化や税・手数料の影響を見落としやすいため、インフレ調整後や税控除後のネット利回りも確認することが重要です。複利運用では得た収益を再投資することでリターンが雪だるま式に増えますから、年間リターンとトータルリターンを意識しながら、複利効果・インフレ・コストを総合的に考慮すると、より適切なリスクとリターンのバランスを見極められます。
不動産担保ローン
不動産担保ローンとは、住宅や土地といった不動産を担保に差し出すことで、お金を借りることができるローンのことです。借りる側が返済できなくなった場合、貸す側は担保となっている不動産を売却することで貸したお金を回収できるため、比較的低い金利で借りることができる場合が多いです。また、借り入れ可能な金額が高くなりやすいのも特徴です。ただし、返済が滞ると不動産を失うリスクがあるため、慎重な資金計画が必要です。




