個人事業主になるにあたって、やるべきことのリストを教えてください。
個人事業主になるにあたって、やるべきことのリストを教えてください。
回答受付中
0
2025/10/27 09:46
男性
個人事業主として独立する際に、開業届の提出や青色申告の申請、税金・社会保険の手続きなど、何から手を付ければよいのか分かりません。事業を始めるにあたって最低限やるべきことを、順序立てて知りたいです。特に、開業初期に見落としやすい行政手続きや、資金・口座・保険に関する準備項目についても教えてください。
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
個人事業主として独立する際は、まず最初の2か月が重要です。この期間に税務・社会保険・資金管理などの手続きを順序立てて進めることで、後々のトラブルを防げます。最初にやるべきことは、事業の基本設計と生活基盤の整備です。
開業準備では、収益モデルや価格設定、月次の資金繰りを整理します。そのうえで、屋号を決め、事業専用の銀行口座とクレジットカードを作りましょう。私的な支出と明確に分けることで、経理の手間を大幅に減らせます。クラウド会計ソフトを導入して、口座やカードを連携すると自動仕訳が可能です。また、請求書にはインボイス対応の記載欄を設け、電子帳簿保存法に対応した管理体制を開業初日から整えることが大切です。メールやPDF請求書などの電子データは紙での保存が認められず、電子的に保存する必要があります。
次に、退職後14日以内に国民健康保険への加入、または任意継続の検討を行います。健康保険の切り替えを怠ると保険料の未納や医療費の自己負担リスクが生じます。さらに、国民年金の第1号被保険者への切り替えも同時に行いましょう。場合によっては、国民年金基金や付加年金への加入で将来の年金額を増やす選択も検討できます。
税務関係では、開業日から1か月以内に「開業届」を税務署へ提出します。同時に、電子申告を行うための「e-Tax開始届」も済ませ、マイナンバーカードと利用者識別番号を取得しておくとスムーズです。
開業から2か月以内には「青色申告承認申請書」を必ず提出しましょう。青色申告を選ぶことで最大65万円の特別控除が受けられ、節税効果が大きくなります。提出が遅れるとその年は白色申告扱いになるため注意が必要です。
また、免税事業者であっても取引先が法人や事業者であれば、インボイス登録を早めに行う方が有利な場合があります。登録は遡及できないため、希望する開始日の少なくとも15日前までに申請するのが安全です。課税事業者を選択する場合は、期首までに「課税事業者選択届出書」を提出します。
従業員や外注を使う場合には、源泉徴収の準備が必要です。報酬や給与から源泉所得税を控除し、原則翌月10日までに納付します。常時10人未満の事業なら「納期の特例」を申請することで年2回にまとめて納付できます。人を雇う場合は、労災保険・雇用保険の加入手続きを10日以内に行いましょう。
事業開始の報告を都道府県税事務所へ提出する「個人事業税の開始等報告書」も忘れがちです。対象業種に該当する場合、事業所得から年290万円を超える部分に課税されます。
資金面では、生活用と事業用の資金を完全に分け、売上の一部を消費税納税用に別口座で積み立てる仕組みを作ると安心です。緊急時に備えて生活費6〜12か月分、事業固定費3〜6か月分を確保しておくのが理想です。
開業後は月次の請求・入金・仕訳・保存の流れを整え、証憑を一元管理します。さらに、所得補償保険や小規模企業共済など、個人事業主向けの保険・共済制度でリスクと税負担をコントロールしましょう。
まとめると、開業の初期段階でやるべきことは「健康保険と年金の切替」「開業届と青色申告の申請」「会計・口座・インボイスの整備」「源泉徴収と県税の届出」の4本柱です。これらを2か月以内に完了させれば、行政・税務・保険の基盤が整い、安心して事業をスタートできます。
関連記事
関連する専門用語
開業届
開業届とは、個人が新たに事業を始める際に、税務署へ提出する書類のことです。正式名称は「個人事業の開業・廃業等届出書」といい、事業を開始した日から1か月以内に税務署へ提出することが原則とされています。提出することで、その人が正式に「個人事業主」として認められ、青色申告などの税制上の優遇措置を受けられるようになります。 開業届には、氏名や住所、事業の種類、屋号、事業開始日などを記入します。提出は税務署の窓口だけでなく、e-Taxを使ってオンラインで行うことも可能です。なお、開業届を提出しなくても事業を始めること自体はできますが、青色申告の特典を受けるためには、開業届と同時に「青色申告承認申請書」も提出するのが一般的です。開業届の提出は、事業を正式にスタートさせる第一歩であり、今後の税務管理の基礎となる重要な手続きです。
青色申告
青色申告は、個人事業主や不動産所得者、小規模事業者などが利用できる税務申告制度の一つで、一定の要件を満たすことで税務上のさまざまな特典を受けられる仕組みです。 具体的には、正確な帳簿を作成し、確定申告書を青色申告として提出することで、最大65万円の控除(複式簿記の場合)や、赤字を最長3年間繰り越して翌年以降の所得と相殺できる制度などが利用可能です。また、家族への給与を必要経費として計上できる「青色事業専従者給与」も特徴の一つです。 青色申告を始めるには、税務署に「青色申告承認申請書」を提出する必要があります。正確な記帳が求められるため、帳簿管理が重要ですが、節税効果が高く、多くの事業主に活用されています。
インボイス制度
インボイス制度とは、消費税の仕入税額控除を適切に行うために導入された仕組みで、正式には「適格請求書等保存方式」と呼ばれます。事業者が取引を行う際に、消費税額を明記した適格請求書、いわゆるインボイスを発行・保存することで、仕入れにかかった消費税を差し引くことができるようになります。これにより、事業者間の消費税のやり取りがより透明化され、不正や二重控除を防ぐ効果があります。ただし、インボイスを発行できるのは税務署に登録した課税事業者に限られるため、免税事業者は取引先から敬遠される可能性もあります。資産運用や事業運営を考える個人事業主やフリーランスにとって、今後の収益や経費計算に大きな影響を与える制度といえます。
電子帳簿保存法
電子帳簿保存法とは、企業や個人事業主が帳簿や決算書、領収書、請求書などの会計関連書類を紙ではなく電子データで保存することを認めた法律です。従来は紙での保存が義務づけられていましたが、デジタル化の流れに合わせて、一定の条件を満たせば電子保存が可能になりました。この法律の目的は、業務の効率化や経理コストの削減に加え、電子データによる透明性や検索性の向上にあります。近年の改正では、電子取引に関するデータの保存が義務化されるなど、企業にとって対応が欠かせない制度となっています。資産運用の観点からは、正確な帳簿管理が税務上の信頼性を高め、結果的に余剰資金をスムーズに運用に回す基盤となる点で重要な意味を持ちます。
源泉徴収
源泉徴収とは、給与や報酬、利子、配当などの支払いを受ける人に代わって、支払者があらかじめ所得税を差し引き、税務署に納付する制度です。特に給与所得者の場合、会社が毎月の給与から所得税を控除し、年末調整で過不足を精算します。 この制度の目的は、税金の徴収を確実に行い、納税者の負担を軽減することです。例えば、会社員は確定申告を行わずに納税が完了するケースが多くなります。ただし、個人事業主や一定の副収入がある人は、源泉徴収された金額を基に確定申告が必要になることがあります。 また、配当金や利子の源泉徴収税率は原則20.315%(所得税15.315%+住民税5%)ですが、金融商品によって異なる場合があるため、事前に確認が必要です。
個人事業税
個人事業税とは、個人で事業を行っている人が、その事業から得た所得に対して都道府県に納める税金のことです。会社員のように給与所得だけの場合にはかかりませんが、個人事業主やフリーランスとして働く場合には対象となる可能性があります。 この税金は、所得税や住民税とは別に課される地方税で、課税対象となる業種が法律で定められています。たとえば、医師、弁護士、飲食業、デザイン業などの特定の業種が含まれます。 税率は事業の種類によって異なり、おおむね3〜5%程度です。計算は、事業所得から必要経費を差し引き、さらに年間290万円の「事業主控除」を差し引いた残りの金額に税率をかけて求められます。つまり、ある程度の利益が出て初めて納税義務が生じる仕組みになっています。




