遺産放棄のやり方を教えて下さい
遺産放棄のやり方を教えて下さい
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2025/08/09 08:19
男性
30代
父が亡くなり、相続人として遺産の手続きを進めるよう求められましたが、借金が多いと聞いており、遺産の放棄を検討しています。遺産放棄をするにはどのような手続きが必要なのか教えて下さい。
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
遺産を放棄することは、一般的に「相続放棄」といいます。相続放棄とは、亡くなった方(被相続人)の財産や借金などを一切相続しないという意思表示を法的に行う手続きです。相続放棄が受理されると、最初から相続人ではなかったとみなされるため、プラスの財産もマイナスの負債もすべて放棄することになります。相続放棄は家庭裁判所で手続きを行います。
具体的な流れとしては、まず被相続人の財産や借金の内容を調査します。銀行口座や証券、クレジットカード、ローン、さらには信用情報機関への開示請求も含めて、できるだけ早く状況を把握する必要があります。そのうえで、家庭裁判所に相続放棄の申述書を提出します。この申述は「相続が発生したこと」と「自分が相続人であること」を知った日から3か月以内(熟慮期間)に行う必要があります。
提出にあたっては、申述書に加えて、被相続人の除籍謄本や住民票除票、申述人自身の戸籍謄本、身分証明書のコピーなどが必要です。また、申述には収入印紙(800円)と切手代がかかります。申述が受理されると、家庭裁判所から「相続放棄申述受理通知書」が届きます。必要であれば「受理証明書」(150円)を取得し、債権者や金融機関に提示することで、相続放棄を正式に伝えることができます。
なお、相続放棄にはいくつかの注意点があります。まず、相続放棄は一部だけ行うことはできず、財産の一部を受け取って、借金だけを放棄するということは認められません。また、相続人一人ひとりが個別に手続きをする必要があり、兄弟の一人が放棄しても他の兄弟には影響しません。
さらに、相続財産を処分してしまうと、相続放棄ができなくなるおそれがあります。たとえば、預金を引き出したり、故人の車を売却したりする行為は「相続の意思あり」とみなされてしまう可能性があるので注意が必要です。
また、相続人全員が放棄すると、次順位の相続人(たとえば親や兄弟姉妹)に権利が移ります。この場合、次順位の人にも新たに3か月の熟慮期間が発生します。相続放棄を検討する際には、自分だけでなく家族や親族との連携も重要になります。
故人が借金の保証人になっていた場合は、相続放棄後も主たる債務者との関係などによって債権者から連絡がくることもあるため、相続放棄を証明できる書類を備えておくことが大切です。
手続き自体はご自身でも可能ですが、書類の不備や期限の見落としなどを避けるために、弁護士や司法書士などの専門家に依頼することも一つの方法です。専門家に依頼すれば、調査や書類作成、裁判所とのやりとりなどを代行してもらえるため、安心してスムーズに手続きを進めることができます。
まとめると、相続放棄は「3か月以内に家庭裁判所に申述書を提出する」ことが最も重要なポイントです。期限を過ぎたり、不要な財産処分をしてしまうと放棄が認められないこともあるため、早めに判断し、必要に応じて専門家に相談することをおすすめします。
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関連する専門用語
相続放棄
相続放棄とは、亡くなった人の財産を一切受け取らないという意思を家庭裁判所に申し立てて、正式に相続人の立場を放棄する手続きのことです。相続には、プラスの財産(預貯金や不動産など)だけでなく、マイナスの財産(借金や未払い金など)も含まれるため、全体を見て相続すると損になると判断した場合に選ばれることがあります。 相続放棄をすると、その人は最初から相続人でなかったものとみなされるため、借金の返済義務も一切負わなくて済みます。ただし、相続があったことを知ってから3か月以内に家庭裁判所に申し立てる必要があり、その期限を過ぎると原則として相続を受け入れたとみなされてしまいます。したがって、放棄を検討する場合は早めの判断と手続きが重要です。
熟慮期間
熟慮期間とは、相続人が相続を「する」「しない」を決めるために与えられている法的な猶予期間のことです。具体的には、相続が開始されたことを知った日から3か月以内に、相続するかどうかを決めて家庭裁判所に申し出る必要があります。 この3か月の間に、亡くなった方の財産や借金の状況を確認し、自分にとって相続が得か損かを見極めることが求められます。もし期間内に何も手続きをしなければ、法律上は「相続する」と判断され、自動的にすべての財産と負債を引き継ぐことになります。資産運用の観点からは、負の遺産を回避するための重要な判断期間であり、財産の内容を冷静に分析する時間でもあります。
相続放棄申述書
相続放棄申述書とは、相続人が「相続を放棄します」という意思を正式に表すために、家庭裁判所に提出する書類のことです。この書類を提出することで、相続人は被相続人の財産や負債を一切引き継がないという選択を法的に行うことができます。相続放棄をするには、被相続人が亡くなったことを知ってから3か月以内に、この申述書を家庭裁判所へ提出しなければなりません。 申述書には、放棄する理由や自分が相続人であることの確認情報などを記載します。借金などのマイナスの財産を抱えたくない場合に用いられる重要な書類ですので、記入ミスや提出期限に注意する必要があります。
除籍謄本
除籍謄本とは、戸籍に記載されていたすべての人が結婚や死亡、転籍などによって戸籍から抜け、戸籍そのものが「閉じられた」状態になった際の記録を写した公的証明書のことです。通常の戸籍謄本は現在有効な戸籍の内容を示しますが、除籍謄本は過去の戸籍情報をそのまま残しており、家族構成の変化や過去の身分関係を確認する際に用いられます。 相続手続きや不動産登記、年金請求などで、被相続人の生涯の戸籍をたどる必要がある場合に取得することが多いです。金融や資産運用の現場では、相続資産の名義変更や財産分与のために除籍謄本が必要となるケースがあり、法的な証明書類として重要な役割を果たします。
収入印紙
収入印紙とは、国に手数料や税金を支払う際に使用する印紙のことです。契約書や裁判所に提出する書類などに貼付することで、所定の手数料を納付したことを証明します。 たとえば、遺留分放棄の申立てを家庭裁判所に行う場合にも、収入印紙を貼って申立手数料を支払う必要があります。 用途によって金額が異なるため、提出先や書類の種類に応じて、適切な額の印紙を用意する必要があります。
相続放棄申述受理証明書
相続放棄申述受理証明書とは、家庭裁判所が相続放棄の申述を正式に受理したことを証明する文書です。似た名称の「相続放棄申述受理通知書」は申立人本人に送られる簡易な通知であるのに対し、この証明書は第三者に対しても相続放棄が法的に成立したことを示す正式な証明書となります。 たとえば、被相続人に借金があった場合、債権者が確認のためにこの証明書の提示を求めることがあります。金融機関や不動産登記の場面などでも使用されるため、相続放棄が確実に成立したことを証明するために重要な書類です。資産運用の文脈では、他の相続人の放棄により自分に財産が集まる場合や、相続財産の再評価が必要になる場面で間接的な影響を及ぼすことがあります。





