国債10年利回りはなぜ重要視されるのでしょうか?資産運用にどんな影響がありますか?
国債10年利回りはなぜ重要視されるのでしょうか?資産運用にどんな影響がありますか?
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2025/10/28 09:11
男性
30代
ニュースなどで「国債の10年利回りが上がった」「下がった」とよく耳にしますが、正直なところ、その意味や重要性がよくわかりません。10年利回りが変動すると、株式や投資信託、住宅ローンの金利などにも影響があると聞きます。実際に資産運用を考えるうえで、この指標をどのように見ればよいのか、教えてください。
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
国債10年利回りは、その国の中長期的な「無リスク金利」を示す指標であり、金融市場全体の“基準金利”として極めて重要です。この利回りは、資産価格、企業価値、住宅ローン金利など、経済のあらゆる場面で影響を及ぼします。
特に10年という期間は、短期的な政策金利よりも景気やインフレの見通しを反映しやすく、実際の投資判断に直結しやすいのが特徴です。
資産運用の観点では、国債10年利回りが上昇すれば、株式や不動産などの将来の収益を現在価値に割り引く際の「割引率」が上がるため、これらの資産価格は下がりやすくなります。
逆に、利回りが低下すれば割引率が下がり、資産価格は上昇しやすくなります。特に将来の成長を期待して買われるグロース株や長期債、不動産は金利変動の影響を受けやすい傾向があります。
債券投資においては、10年利回りがポートフォリオ全体の価格変動を左右します。利回りが上がると既発債券の価格は下落しますが、新たに購入する債券の利回りは改善します。したがって、金利上昇期には短期債や変動金利型商品を増やし、金利低下期には長期債を保有するなど、期間分散やデュレーション管理が重要です。
不動産やREITも、国債10年利回りと密接に関係します。利回りが上昇すると資金調達コストや期待利回り(キャップレート)が上がり、不動産価格が下落しやすくなります。住宅ローン金利も10年利回りの動向に連動するため、家計の負担増や消費抑制につながることがあります。
また、為替市場にも波及します。10年利回りが他国より高いと、その国の通貨は相対的に買われやすくなります。金利差は通貨価値を動かす大きな要因のひとつですが、為替は景気やリスク回避姿勢など複数の要因で動くため、金利だけで判断するのは危険です。
投資家としては、10年利回りの変化に対する資産全体の感応度を把握し、金利上昇・下落それぞれの局面での損益を試算しておくことが重要です。現金、短期債、インフレ連動債、外国債などを組み合わせ、金利変動に強い分散ポートフォリオを作りましょう。
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国債利回り
国債利回りとは、政府が発行する債券(国債)に投資した場合に得られる収益の割合を示す指標です。具体的には、国債を保有することで定期的に受け取る利金と、購入価格や満期時の償還価格との関係から計算されます。国債は信用力が非常に高く、リスクが低いとされているため、その利回りは「安全資産の利回り」として広く参照されます。 利回りが上がると投資家はより高い収益を得られますが、同時に国債価格は下がる傾向があり、利回りと価格は逆の動きをします。国債利回りは、住宅ローン金利や企業の借入金利、株式市場の動向などにも大きな影響を与えるため、経済全体の「金利の基準」として極めて重要な役割を果たしています。
デュレーション
デュレーションは、債券価格が金利変動にどれほど敏感かを示す指標で、同時に投資資金を回収するまでの平均期間を意味します。 一般に「Macaulay デュレーション」を年数で表し、金利変化率に対する価格変化率を示す「修正デュレーション」は Macaulay デュレーションを金利で割って算出します。 数値が大きいほど金利 1 %の変動による価格変動幅が大きく(例:修正デュレーション 5 年の債券は金利が 1 %上昇すると約 5 %値下がり)、金利リスクが高いと判断できます。一方で金利が低下すれば同じ倍率で価格は上昇します。デュレーションを把握しておくことで、ポートフォリオ全体の金利感応度を調整したり、将来のキャッシュフローと金利見通しに応じて保有債券の残存期間やクーポン構成を選択したりする判断材料になります。特に金利の変動が読みにくい局面や長期安定運用を重視する場面では、利回りだけでなくデュレーションを併せて確認することが重要です。
キャップレート(CapitalizationRate)
キャップレート(CapitalizationRate)とは、不動産投資において、物件が生み出す年間の純収益(家賃収入など)をその物件価格で割って求める利回りのことです。「還元利回り」とも呼ばれ、不動産がどれだけ効率的に収益を上げているかを示す指標です。 たとえば、年間の純収益が100万円で物件価格が2,000万円なら、キャップレートは5%となります。キャップレートが高いほど投資効率が良いように見えますが、同時にリスクが高い物件である場合もあります。そのため、立地や築年数、賃貸需要などを考慮して総合的に判断することが大切です。不動産投資における収益性を比較するうえで、基本となる重要な概念です。
インフレ連動債
インフレ連動債とは、元本や利子の支払額が消費者物価指数などの物価指標に連動して増減する仕組みを持つ国債や社債の一種です。物価が上昇すれば元本やクーポンが自動的に引き上げられるため、投資家はインフレによる購買力の目減りを抑えつつ一定の実質利回りを確保しやすくなります。反対にデフレ環境では元本が目減りすることもあるため、物価動向が投資成果に直結する点が特徴です。インフレリスクを意識した分散投資の選択肢として、年金基金や長期投資家に広く利用されています。
リスクフリーレート(無リスク金利)
リスクフリーレート(無リスク金利)とは、「元本が失われる心配がなく、確実に利回りが得られる」とされる、理論上もっとも安全な投資から得られる金利のことを指します。一般的には、信用リスクが極めて低い国の国債、たとえば日本国債やアメリカの米国債などの短期利回りがリスクフリーレートの代表例として用いられます。 この金利は、他の投資と比較する際の基準となり、たとえば株式投資のリターンがリスクフリーレートをどの程度上回るかによって、その投資の「リスクに見合った魅力」が判断されます。資産運用やポートフォリオ理論においては、リスクフリーレートはリターンの期待値や資本コストを計算するための基準として非常に重要な要素です。特にシャープレシオやCAPM(資本資産価格モデル)といった分析手法では、この金利が基本となります。





