AT1債・B3T2債・TLAC債はどう違うのですか?
回答受付中
0
2025/05/06 16:32
男性
40代
AT1債・B3T2債・TLAC債と名前が多くて混乱します。投資判断のために、それぞれの特徴とリスクの違いを簡潔に整理してください。
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
AT1債は銀行が自己資本として扱える永久劣後債で、財務指標が所定の閾値を下回ると元本削減や株式化が自動的に発動し、利払いも停止されるため、最も株式に近いリスクを負います。B3T2債(バーゼルⅢTier 2債)は満期5年以上の期限付き劣後債で、破綻時には元本削減対象となるものの、経営悪化段階での自動損失吸収は義務付けられておらず、AT1より上位に位置します。TLAC債は国際的に重要な銀行持株会社(G-SIBs)が発行するシニア債で、平時は一般債と同等ですが、破綻処理時に株主・劣後債に次いで損失を負担するよう構造的に劣後します。総合すると、想定される損失負担順はAT1債>B3T2債>TLAC債となります。
関連記事
関連質問
関連する専門用語
AT1債
AT1債(Additional Tier 1 Bonds)は、債券と株式の中間的な性質を持つ特殊な金融商品です。正式名称のAdditional Tier1が示すように、銀行の中核的自己資本であるTier1の一部として算入される証券です。 原則として償還期限のない永久債として発行され、発行体である銀行の財務状態が著しく悪化した場合には、元本が削減されるか株式に転換される条項が付されています。また、銀行の裁量により利払いを停止できる特徴があり、一旦停止された利払いは後日支払われることはありません。 このように、通常の債券よりも株式に近い性質を持つことから、発行体にとっては資本性の高い調達手段となる一方、投資家にとっては相応のリスクを伴う投資商品となっています。
B3T2債
B3T2債(Basel III Tier 2債)とは、国際的な銀行規制であるバーゼルIIIに基づいて、金融機関が自己資本を補強するために発行するTier 2資本(補完的自己資本)に該当する債券のことです。Tier 2は、コア資本であるCET1(普通株式等Tier 1資本)やAT1債(その他Tier 1債)に次ぐ階層に位置づけられ、万が一の損失吸収能力を備える「セーフティクッション」として機能します。 B3T2債は、一般的な社債に比べて返済順位が低く、破綻時には元本の削減(ヘアカット)や支払い停止のリスクがあります。ただし、AT1債と比べると支払いの繰り延べや強制的な株式転換といった構造は原則含まれず、より明確な償還期限とクーポン支払い条件が設けられているため、リスクとリターンのバランスは中間的です。 投資家にとっての主な魅力は、相対的に高めの利回り。ただし、バーゼルIIIが求める条件(満期までの残存期間に応じた段階的な資本認定除外など)により、金融機関が途中で繰上償還(コール)を選択する可能性もあるため、実際の運用期間や収益に影響する点には注意が必要です。 金融機関の財務基盤を支える資本の一部として設計されていることから、B3T2債への投資は単なる利回り商品というよりも、銀行の健全性や資本政策への深い理解を前提とした判断が求められます。信用格付けやCET1比率、規制環境の変化など、複数の要素を総合的に見極めることが重要です。
TLAC債
TLAC債とは、金融機関の破綻時に損失吸収や資本補填の役割を果たすために発行される債券であり、国際的な金融規制であるTLAC(Total Loss-Absorbing Capacity)規制に基づくものである。特に大手銀行に対して求められ、破綻時に公的資金を使わずに自己資本の強化や負債の整理を行う仕組みとして位置付けられる。TLAC債の投資家はリスクを負う可能性があるため、通常の社債よりも高い利回りが設定されることが多い。
劣後債
劣後債とは、企業や金融機関が資金調達のために発行する債券の一種で、通常の社債(シニア債)よりも弁済順位が低い(劣後する)債券のことです。発行体が破綻した場合、一般の債券や他の債権者への支払いが優先され、劣後債の保有者への弁済はその後に行われるため、元本や利息の支払いリスクが相対的に高くなります。 このリスクの高さを補うため、劣後債は通常の社債よりも利回りが高めに設定されており、リスクプレミアムが反映されたハイリスク・ハイリターンの投資対象として位置づけられます。劣後債には、シニア劣後債とジュニア劣後債があり、ジュニア劣後債の方がさらに弁済順位が低いため、リスクが高くなる傾向にあります。 特に、金融機関が発行する劣後債の一部(例:AT1債やTier 2債)は、国際的な銀行規制であるバーゼル規制に基づき、一定の条件を満たせば自己資本として算入できるため、自己資本比率を向上させる手段として利用されています。ただし、AT1債(追加的Tier 1債)は発行体の財務状況によって利息の支払いが停止される可能性もあるため、リスクが高くなります。 投資家にとっては、高い利回りの魅力がある一方で、発行体の信用リスクや市場環境を十分に考慮した慎重な判断が求められる金融商品です。また、流動性が低く、満期前に売却が難しい場合がある点にも注意が必要です。
G-Sibs
「Global Systemically Important Banks」の略。主要国の金融当局で構成される国際的な金融システムの安定を目的とする組織である金融安定理事会(FSB)が毎年対象となる銀行のリストを発表している。2011年以降毎年見直されて現在は29銀行となっています。 日本ではMUFG、SMBC、みずほFGの3グループが対象となっています。