執行役員になると、退職金や企業年金に影響がありますか?
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2025/03/24 16:21
男性
50代
執行役員に昇格すると退職金や企業年金の扱いが変わると聞いたのですが、具体的にどのような影響があるのでしょうか?
回答
株式会社MONOINVESTMENT / 投資のコンシェルジュ編集長
執行役員への昇格で退職金・企業年金がどう変わるかは、①社員身分を残すか、②委任(役員)契約に切り替えるかで明暗が分かれます。
社員身分を維持するケース
‐ 雇用契約は継続されるため、就業規則や退職金規程がそのまま適用されます。
‐ 確定給付年金(DB)・企業型確定拠出年金(DC)にも引き続き加入でき、勤続年数も通算されます。
委任契約型・取締役兼務に切り替えるケース
‐ 労働契約を終了し役員報酬扱いとなるため、多くの会社では退職金制度の対象外になります。これまでの退職金相当額は「既得分」として支給・精算されるか、社内規程に従い別枠の役員退職慰労金に組み替えられます。
‐ 企業年金については、役員は制度加入資格を失うのが原則です。脱退一時金を受けるか、60日以内※に個人型確定拠出年金(iDeCo)等へ資産移換する手続きが必要になります。
‐ 移換しないまま期限を過ぎると「自動移換(運用停止・手数料発生)」となるため要注意です。
※企業型DCの資産移換期限は制度上「資格喪失から6ヵ月以内」が目安です。
対策のポイント
- 昇格辞令が出る前に、就業規則・退職給付規程と役員報酬規程を必ず確認する。
- 企業年金の脱退・移換手続きに必要な書類と期限を人事・財務部門で確認し、漏れなく対応する。
- 役員就任後の退職給付をどう設計するか(役員退職慰労金・役員向け企業型DC・逓増定期保険など)を税務面も含めて検討する。
このように「契約形態の違い」が退職給付に直接影響します。昇格通知を受けたら早めに社内規程と手続きを確認し、将来の資金計画に反映させてください。
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